せいしんのタマシイ

俺の頭の中

〜目に見える以上の力〜『トランスフォーマー』だからできること

 『トランスフォーマー』というシリーズを知っているだろうか。車や飛行機からロボットに変形する「超ロボット生命体」の、おもちゃやアニメなどのシリーズの総称である。しかし実際には様々なシリーズのトランスフォーマーたちは乗り物だけでなく拳銃、ラジカセ、恐竜、昆虫、動物など、様々なものに変形する。中には頭部に変形して首無しの本体(あれってどっちが本体なの?)と合体したり、惑星に変形する規格外のものもいたりする。

 トランスフォーマーが何にでも変形できるように、シリーズも様々な形で提供されている。もともとは日本のおもちゃにアメリカの会社がキャラとしての設定を追加したのが始まりであり、それをもとにしたのが初代アニメ版である。

 そこでウケたのはやはり個性豊かなキャラクターたちだろう。(やけに血の気が多い)正義の味方サイバトロン、(人間味に溢れる)悪の軍団デストロン、なかでも事あるごとにリーダーになり代わろうとするニューリーダー病ことスタースクリームなどは、有名なのではないだろうか。ツッコミどころ満載のストーリーや描写、作画崩壊など今でもいろいろ言われることはあるが、それぞれに個性のあるロボットたちというのは、やはり魅力的と言わざるを得ない。

 魅力的なトランスフォーマーたちと、そこまで深く考えなくてもいいストーリー、恐らくこれこそが、『トランスフォーマー』を構成する上での重要素材であると言えるのではないだろうか。

 そして、この『トランスフォーマー』のアニメは、アメリカでは劇場版でキャラクターを大量虐殺、一新した後(この映画の手軽な視聴方法誰か知りませんかね?俺あらすじしか知らないんですけど)、続編が作られ、しばらく制作がストップする。

 一方日本では、劇場版の公開より先に続編が放送開始してしまい、大量虐殺によるキャラの激減に辻褄が合わなくなってしまった。そこで、その謎をゲームによって補完しようと発表されたのが有名な『コンボイの謎』である(『コンボイの謎』なのに主人公がコンボイじゃないのは、コンボイが死んだ謎を解くためのゲームだからである)(もっともこのゲームで知ることができたのはごく僅かな情報だけで、謎を補完するには至らなかったという)。その後は日本オリジナルの展開としてガンダムのようにシリーズを重ね(ただし話はそんなに繋がってない)、OVAを最後にやはり制作はストップする。

 大事なのはここからである。アニメの制作がストップし、その後『トランスフォーマー』が選んだのは玩具だけでシリーズを展開するという道だった。たとえアニメがなくなっても、雑誌や説明書に漫画や小説をつけたりすればおもちゃが売れるところまできたのだ。

 ここまで来たら一つのコンテンツとして無双できるような気がするが、『トランスフォーマー』はまだ止まらない。今度はCGアニメで『ビーストウォーズ』という新しいシリーズが展開されるのである。全く新しい世界観で…かと思いきや、思わぬところで初代アニメと繋がったりして、『トランスフォーマー』の「広さ」を感じさせる。その後、日本では『ビーストウォーズ』の最終作として『カーロボット』(動物が変身するのが当たり前になったからわざわざ車から変身することをアピールしている)が作られ、『トランスフォーマー』もひと段落…かと思いきやすぐに『マイクロン伝説』で新しいシリーズが始まり、マイケル・ベイ監督により実写化、次に『アニメイテッド』があり、『プライム』が放送され、その次は『アドベンチャー』があり…あっいや『参乗合体』があったな…ていうか『バイナルテック』とかにも触れた方がいいかな…でもそれだとキリないしな…という風に、あらゆる媒体で無限に展開されるシリーズ、それが『トランスフォーマー』なのである。

 ここまで根気強く読んでくれてる人の中にはこう思う人もいるかもしれない。「そんなの追いきれなくない?」と。まあそうですよ。全部は無理ですよ。アニメ、漫画、小説、おもちゃ、これら全部を網羅してる人がいたら頭上がらないですよ。そういう意味では「オタク向き」ではないかもしれない。キャラの設定や背景、文脈を重視する(私のような)オタクにとって、一人のキャラクターに関するもの全てを集めることさえも難しいこのシリーズは、なんともノりきれないシリーズだと思う。

 でも『トランスフォーマー』は、おもちゃ屋に行って気に入ったトランスフォーマーをお迎えして、ギゴガガゴと遊んでいるだけで楽しいし、古本屋でふと目に入った漫画や小説を衝動的に買って読むだけで新たな発見がある。

 一つの作品を好きになり、一人のキャラを好きになるだけでも、「その話にはこんなバックグラウンドが…」「そのキャラはこっちの作品ではこんな感じだよ」と、どんどん沼にハめこんでくるのだ。

 目の前の作品だけには留まらない、まさに「目に見える以上の」魅力が、『トランスフォーマー』にはあるのである。